現在、上記のように第7次米国合同委員会は、収縮期(上の血圧)が120未満、拡張期(下の血圧)が80未満というのがもっとも良いと報告しています。以前に比べるとだいぶ基準が下がりました。なぜでしょうか?
普段自覚症状がなくても、上の血圧が120以上になると、少しずつ心臓発作(心筋こうそくなど)や脳卒中(脳内出血や脳こうそくなど)を起こす確率が高くなることがわかったからです。
病院で血圧を測って120以上だったらすぐに血圧を下げるお薬を飲まされるのかと心配してしまいますが、そうではありません。まずは、ご自宅で朝食前にイスに座った姿勢で測定することから始めましょう。もし毎日120以上であれば、将来、高血圧と診断(上が140以上)されてしまう確率が高いようです。
そうなる前に、主治医の先生からある程度の介入(食事や運動についてあれこれ指図を受ける)されます。きちんと守れば案外血圧はスムーズに正常域に改善していくでしょう。
毎朝140以上ある方は、高血圧ステージ1と診断されます。もちろん食事療法や運動療法も必要ですが、通常は利尿剤や血管拡張剤を用いて血圧の正常化をはかります。中には、顔が紅潮したり、動悸がしたりする副作用が出てしまうことがあるので、変化を感じたらすぐに主治医に連絡しなければいけません。
毎朝160以上ある方、つまり高血圧ステージ2の方は、1種類の薬ではなかなか正常にならないことがあります。そのときには2種類のお薬を飲まなければならないことがあります。
上記のステージ1又は2と診断された方は、ひとまずの目標は140未満です。腎臓病などをお持ちの方は、130未満が目標として設定されます。
また、一日の中でも早朝に高い人、夜高い人などタイプによって治療が異なる場合がありますので、まずはご自分がどのようなタイプなのかを見極めることが大事です。
1. 食事療法
主として減塩と減量です。出来るだけ素材の味で食事を楽しむ習慣をつけましょう。
むやみに塩、醤油、ソース、マヨネーズなどをかけて食べるのは避けましょう。
1日の食塩摂取は、高血圧症の方は7グラム以下が理想と言われています。
しかし大部分の方が10グラム~15グラム程度摂取されていると言われています。
徹底的な減塩で、血圧は確実に低下しますので是非実行して下さい。
2. 運動療法
週に3~4回、30分から1時間程度のウォーキング又はジョギングが必要です。
膝や腰を痛めないように、適切なシューズやサポーターを着用しましょう。
それにより、減量も期待する事ができ、心臓への負担を軽減できます。
3. 薬物療法
血圧を下げる薬にはたくさんの種類があります。
その方の体質や元々の持病、高血圧の重症度により使い分けます。
利尿剤、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB、βブロッカー、などのグループに分類されます。
各々のグループに、さらに各製薬メーカーから多種類のお薬が開発されています。
最近良く使用されるのは、ARBと利尿剤の合剤(コディオ、プレミネントなど)です。比較的副作用も少なく、これからも使用頻度が増していくことが予想されます。
実際には副作用などを考慮し、初めは少量から開始し、上記の食事・運動療法と合わせて目標値におよそ2~3カ月かけて近づけていきます。
重症の方は3種類程度のお薬を併用する事もありますが、精神ストレスが強い方の場合には安定剤や睡眠薬を使用して血圧を下げることもあります。
頸動脈や冠動脈に動脈硬化性変化が強い方、一過性脳虚血、狭心症、などと診断された方は、抗血小板剤や抗凝固剤(バイアスピリン、ワーファリン、プラビックス、プレタール等)を併用して脳梗塞や心筋梗塞を予防します。
更に脂質異常が認められた場合は、コレステロールや中性脂肪を低下させる薬も併用となる場合がありますが、こうなるとかなりの薬を併用することになり、医療費も大変な額になってしまいます。
日頃から、こうした生活習慣病にかからないよう、食生活、睡眠、アルコール制限、禁煙、ストレス回避など十分に注意を払って下さい。
分類 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
至適血圧 | < 120 | かつ | < 80 |
正常血圧 | < 130 | かつ | < 85 |
正常高値血圧 | 130~139 | または | 85~89 |
軽症高血圧 | 140~159 | または | 90~99 |
中等症高血圧 | 160~179 | または | 100~109 |
重症高血圧 | ≧ 180 | または | ≧ 110 |
収縮期高血圧 | ≧ 140 | かつ | < 90 |