良性発作性頭位めまい症
 
三半規管の浮遊耳石が原因と考えられています。
「朝、寝返りを打つと数分間目が回ったが、頭の向きを変えたら治まった」という症状が典型的です。
眼振のタイプによって、外側半規管型(半規管結石・クプラ結石)、後方半規管型等に分類されます。
頭の向きによって眼振の方向が替わり、同一姿勢であれば数十秒以内に回転が治まります。
耳石置換法(エプリー法など)が極めて有効な場合があります。
回転性めまいは治っても浮動感や体動時のふらつきが持続することもあり、再発も稀ではありません。

メニエール病 

発作的に耳鳴り・難聴・嘔吐を伴う激しいめまいが現れます。(同じ症状を何度も反復します。)
時に聴力などの異常が明確に現れないケースもあります(前庭型メニエール病)。
めまいは多くの場合回転性で、長い場合は6時間程度続くことがあります。
発作中は眼振が観察されますが、初期と回復期で眼振の向きが変化することがあります。
耳の症状としては、難聴ではなく「閉塞感」と表現される場合があります。
雨の前など、気圧変動によって誘発される方が多いようです。


椎骨脳底動脈血流不全よるめまい

頚椎横突起を通る椎骨動脈が、頚椎の旋回等によって屈曲して脳幹や小脳の血流が不足することで発生します。
意識障害や言語異常などの症状を伴うことがあります。
脳・頚部の血管を精査することで診断が可能です。
椎骨動脈の評価はエコーではやや難しくMRI、MRA、場合によっては血管造影などが必要です。
高齢の方、高血圧・糖尿病の方、喫煙者などは動脈硬化の可能性が高まりますので、要注意です。


脳梗塞よるめまい

概ね50歳以上の方で、高血圧・脂質異常・糖尿病・冠動脈疾患の既往のある方に突然の回転性めまい、眼振(眼のけいれん)、嘔吐などが現れた場合は、脳梗塞の可能性があります。また若くて持病がない方でも、症状によっては脳梗塞を否定することが難しいケースもあるため、必要に応じて精査を行います。

前下小脳動脈、後下小脳動脈(最多)、上小脳動脈(めまいは稀)、中大脳動脈の梗塞で、意識障害や手足のしびれ、麻痺、言語障害(呂律が回らない)等があれば診察のみで脳梗塞と予想がつきますが、症状が回転性めまいと眼振だけの場合は下記の前庭神経炎などの末梢性めまいと区別が困難な場合があります。

特に小さな脳梗塞の場合、初期のうちはCTやMRIでも写らないことがあり、数日経過してから判明することがあります。

初期のうちは下記のHINTS PLUSを行うことで、MRIよりも感度良く脳梗塞をみつける(除外する)ことが可能といわれています。

Head Impulse Test:前庭眼反射を観察
Nystagmus:方向交代性、垂直性眼振の有無を観察
Test of Skew:眼位偏奇を観察
Hearing:聴力のチェック


前庭神経炎

発作的に回転性めまいと嘔吐が起き、1週間程度続くことがあります。
回転性の激しいめまいは一度きりで終わりますが、その後の「フワフワする感じ」「浮動感」が長く続くことがあります。パソコン作業や読書など、眼に負担がかかる作業はしばらく困難です。
帯状疱疹などのウイルスとの関連、微小血管障害との関連も疑われています。
メニエール病と違い、原則として難聴や耳鳴りなどの「蝸牛症状」は伴いません。
メニエール病の初期にも同じような症状を認めることがありますので、病状をよく観察する必要があります


脊髄性めまい

脊髄の後索という神経回路がやられてしまうと、めまいが生じますが、回転性ではなく、平衡感覚がなくなってしまうタイプのことが多いです。目を閉じると途端に倒れてしまいます。小脳脊髄変性、脊髄炎、多発性硬化症、キアリ奇形、脊髄腫瘍、脊柱管狭窄、後縦靭帯骨化症などで生じることがあります。


心因性めまい(不安障害、パニック障害、うつ状態)

回転性というよりは、「フワフワする」「ボーっとする」などと表現されます。
特定の場所(人ごみ、駅、電車、建物)や時間(通勤・通学前)に起こりやすくなります。
メニエール病や、良性発作性頭位めまい症のあとに、不安や恐怖感から、このような病態になってしまう方も多いようです。
抗不安薬は有効ですが、依存性も問題となりやすく、しばしば難治性となります。

起立性調節障害

寝ている状態と起きている姿勢で極端に血圧が違う場合は立ちくらみ、頭痛が生じます。
これを「めまい」と表現されて来院される方が多いようです。
交感神経刺激薬や昇圧剤で改善されます。
脳脊髄液減少症でも同様の症状が現れる場合もあり、両者の鑑別が必要なことがあります。


片頭痛関連性めまい(前庭型片頭痛)

もともと片頭痛があるか、片頭痛の家族歴がある場合に発生することがあります。
「めまい治療薬」の効果は少なく、「片頭痛予防薬」を使用するとめまいの頻度が減少する場合があります。
他のめまい症よりも短時間で終わることが多く、メニエール病のような聴力障害は明確にはみられず、頭位めまい症のような頭位の変換による回転性めまいもあまり見られません。発作的に「クラクラーっと」数分持続するケースが多いようです。


神経血管圧迫症候群

小脳の周囲を走行する血管と、平衡感覚を司る神経とが接触、または圧迫されることにより発生するめまい症です。文献的には手術治療が可能と報告されていますが、大部分の方は内服治療で改善されます。前庭型片頭痛に臨床症状が似ていますが、神経血管圧迫症候群の方がより「回転性」で「発作的」であり、また片頭痛の病歴や家族歴がなく、動脈硬化の進行する年代の方に多いようです。三叉神経痛の治療薬でもあるカルバマゼピンや、痙攣発作の予防薬のクロナゼパムを使用することが多いようです。

めまいは若い方からお年寄りまで、程度も種類も様々です。
的確な診断が治療の第一歩です。
必ずしも新薬が有効ではなく、漢方薬、生活習慣改善で治ることがあるのも特徴です。お悩みの方は一度ご相談下さい。

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めまいやふらつきは、様々な身体・精神疾患によって起こります。

歩ける程度のめまいの場合、末梢性めまい(内耳の前庭迷路)や機能性めまい(心因性・自律神経性)の方が大部分ですが、中には放置すると危険な中枢性めまい(脳梗塞、脳出血、脳腫瘍など)の方がおられます。

当院では、めまいやふらつきの症状のある方には必要に応じて下記のような検査を行い、できるだけ正確な原因診断に努めております。

1.詳細な問診の聴取(最も重要)

2.対座による眼の観察(眼位・眼球運動・眼振の観察)

3.フレンツェル眼鏡を使用した眼の観察(頭位変換による眼振の観察)

4.平衡機能検査(重心動揺計)

5.血液検査(貧血や炎症、動脈硬化など内科疾患が疑われる場合)

6.心電図(不整脈による失神が疑われる場合)

7.脳CT(脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、くも膜下出血等の可能性を除外する目的)